アップルが製造している紛失防止タグ、「エアタグ」。
財布やバッグの中に入れておくことで、スマホやパソコンから現在位置を確認できるという
いわゆるGPSのような働きをしてくれるアイテム。
今回は、このエアタグを使って
位置情報はどのくらい正確なのか?
子供やお年寄りの見守りGPSのように使えるのか?
また、どういう条件下では使えないのか?
実際に紛失してしまった時を想定して試してみたので、レビューしていく。

擬似的に紛失→発見まで
広い公園でエアタグを無くしてみた。

とりあえず、擬似的に紛失してみる。
とは言っても
自分で落として自分で見つけるのも、どこか味気ない気がしたので
今回は家族に協力を依頼して、エアタグを隠してもらうことにした。

都合よく巨大な公園があったので、ここに決めた。
周囲をぐるっと見渡しても、見える範囲全てが公園。
ここで
『不幸にも荷物を紛失したが、偶然エアタグを付けていた』
という設定で、遺失物探索をしてみる。
「宝探しして遊ぶぞ!エアタグを隠すんだ!」
エアタグ紛失大臣を任命された長男が意気揚々と出発したので、うっかり隠している様子を見てしまわないよう気をつけながら紛失報告を待つ。
探索開始
長男がエアタグを隠しに行って、待つこと数分。
バタバタと走って帰還し、バッチリ隠してきたと楽しそうな顔で報告を受ける。
エアタグのお手並み拝見、探索開始。
『探す』アプリ上にエアタグの位置が表示される。

「探す」アプリ上に、ある程度ざっくりではあるがタグの位置が表示されている。
この画面に表示されている「経路」をタップすることで
現在位置からエアタグまでのルート案内が始まる。

ナビを頼りに近くまで行くと、さらに詳細な位置を探索するモードに。


ナビを頼りに、ある程度タグの近くまで接近したところ
先程まで「経路」と表示されていたアイコンの部分が「探す」に変化する。

「探す」をタップすると、iPhoneが電波を飛ばして周辺の探索を始める。
このときにエアタグが発する信号をキャッチできれば、詳細な方角と距離の計測が可能になる。
しかしながら、まだ信号が弱いという表示が出たので
もうしばらく歩き回ってみる。
エアタグの信号をキャッチ→発見

周囲を少し歩き回っていると、不意にiPhoneがエアタグの信号を明確にキャッチした。
画面上にタグの方角と距離を示す矢印が表示されている。
まるでコンパスが常に北を示すかのように、iPhoneの向きをくるくる変えても正確にエアタグの方向を示し続ける。
矢印を頼りに、エアタグの方向へ歩いていく。
近づけば近づくほどiPhoneが小刻みに振動し、感触的にもタグへの接近を知らせる。

いよいよ近くまで接近してくると、画面上の矢印が円形に変わる。
この円形が小さくなればなるほどエアタグに近づいている。
(iPhoneの振動もそれに応じて小刻みになる)
アップル製品はこういう演出が凝っていて面白い。

かなり近づいてきたので、辺りを見渡してみたところ
無造作に置いてあったエアタグを、無事に発見。
地図上でざっくりした場所まで誘導し、近辺に来たら信号を探知。
そして正確な位置へ案内するという流れ。
精度はかなり高いように感じた。
ちなみに、ある程度近くまで近づいていれば、
画面上に表示されているスピーカーのアイコンをタップすることで、エアタグからアラームを鳴らすこともできる。
周囲が暗かったり、草むらのような場所に落としていて目視で見つけるのが難しいときには
音を鳴らして位置を特定することもできる。
車や自転車の盗難にも有効か
エアタグを使って、盗難車を自力で見つけた人がいるらしい
どうやら、盗まれた車をエアタグで発見した人がいるらしい。
その人は警察より先に自力で犯人を見つけてしまったという。
車を盗まれる、というのはなかなか希少なケースだとは思うが
高級自転車やバイクなどは比較的盗難の被害に遭いやすいのも事実。
そういった使い方もアリかもしれない。

エアタグの弱点
前述の通り、位置情報はかなり正確。
その上、
ボタン電池一個で1年以上動き
本体は防水性能も備えている。
これ最高じゃないか?なんか弱点あるのか?と思ったら
実はエアタグ、探索が苦手な状況があった。
位置情報が更新されないケースがある

そもそも、こんなに高性能なのに電池が1年以上も保つのが不思議でならないと思っていたが
実はこのエアタグ、GPSの機能は無い。
じゃあどうやって位置情報を伝えているんだ、という話だが
エアタグは、
『タグ周囲にあるアップル製品の電波を一時的に借りて、ネット上に現在位置を表示する』
という仕組みになっている。
例えば、
『タグが盗難され、とある場所に放り捨てられてしまった』場合
その後、
『偶然近くを通りかかった人が、iPhoneなどのアップル製品を保有』していたら
その人の電波を利用して、ネット上に現在の位置を発信する。
なので、
『周囲に誰もいないような場所』だったり
『電波が届かない場所』の場合は
エアタグは誰の電波も借りることができず、現在位置の更新ができない。
「探す」アプリ上には、最後に通信が確認された場所が表示され
それ以降の位置情報の更新は止まることになる。
動くものの追跡には向かない
ちなみにその性質上、『動くものを追いかけるのも苦手』。
エアタグ本来の用途は、あくまでも紛失物の探索。
「追跡」には向かない。
というのも、エアタグは
『近くにあるアップル製品の電波を借りられるタイミング』
でしか位置情報を更新できないので
エアタグ自体が移動を続けている場合、位置情報の更新頻度が全く安定しない。
それもそのはず。
iPhoneを持っている人とすれ違った時にしか位置情報を更新できないからだ。
街中ならともかく、人気が少ないような場所では更に情報が不安定になる。
「さっきまではここにあったはずなのに、いま確認したら全然違うところにある」
なんてことが頻発する。
例えば、もしお子さんに持たせて迷子対策のような使い方を考えているなら
思ったほど役には立たないと思う。

私もいちど子供に持たせて、迷子に使えるか試してみたが
やはり位置情報の更新が全く安定せず、捜索には使えなかった。
何より、タグ側からは何も操作することができないので
仮に迷子対策のために持たせたとして、子供の方から位置を知らせたり助けを求めたりといった使い方ができない。
見守りの用途で子供に持たせるなら、私は断然アップルウォッチをおすすめする。
用途以外の使い方には弱いが、正しく使えば最強。
そもそも、エアタグは『動くものの追跡』は想定していない。
コレはあくまでも遺失物探索が目的の製品であり
この用途に至って言えば、やはりエアタグは最高といえる。
『アップル製品が近くを通ったときにしか位置情報を更新できない』
という弱点はあるものの、
日本人のiPhone利用率の異常な高さを考えると、これはそこまで大きなデメリットにはならない。
紛失したエアタグの近くを誰か一人でも通れば、それでバチっと位置情報が特定できる。
日本中のアップル愛好家が血眼になって一緒に探してくれるようなもの。
リアル紛失経験

実は先日、家族が財布を無くして大騒ぎしたことがあった。
偶然、買ったばかりのエアタグを財布に入れていたので
すかさず「探す」アプリで位置を確認した。
アプリにはすぐさま財布の位置が表示されたので、見つかったことにひとまず安堵したが
しばらく見ていると、街中を転々と移動していることに気がついた。
『これ誰かに拾われたんじゃない?・・』
すぐに回収に向かおうとするも、少しのあいだ監視していたら
エアタグはバスターミナルに入り込み、そのまま動かなくなった。
もしやと思って、バスセンターに問い合わせてみたところ
バスの座席の下から無事に発見され、ことなきを得た。
どうやら昼間に乗車したとき落としていたようで、無事に手元に返ってきた。
もし財布にエアタグを入れてなかったら
間違いなく、どこで無くしたのか分からなかった。
あちこち歩き回って一晩中探すことになっていたかもしれない。

今になって考えてみれば、記事としてはすごく美味しい展開だったのに
必死だったもので写真を撮りそびれてしまったことが悔やまれる。